
この世界に生きること
この世界にみんな生きている。苦しみや悲しみの方が多いとしか思えないこの世界に 何故生まれてきたんだろう。朝、いつものようにそれぞれがそれぞれの服を着て歩いてゆく。どんな想いを持ち、どんな悩みを抱えながら歩いているんだろう。その一人ひとりに人生があり、出会いがあり その人にしか味わえない喜び、悲しみがあるんだろうな。
そんなこと考えながら、停めた車の中から朝の風景を見ている。今日も心を重くするよう問題が幾つかある。でもそれでも僕はこの世界に生れてきたかった。この 苦しみ悲しみに満ちた忍土の世界に 僕は生まれたかった。万事休すかなと思うこともある。これで人生が終わりかなと思うこともある。でも終わりを意識すると 今与えられている時の掛け替えのなさを痛烈に感じる。この 人間、として生きる人生それがとても愛しいものに感じられてくる。
余りに苦しかったり、不安に襲われる時は、特攻隊の青年のことを想うようにしている。彼には明日は無い。明日は確実に彼の命はない。どんなに愛しい人々とも別れていかなければならない。どんな気持ちだったんだろう。彼の目に映る世界は どのようなものだったんだろう。この世界は自分の想い通りにはいかない。自分にとって不本意なことも起こる。「どうしてこんなことになるんだ!」と叫びたくなることもある。でもその出来事を引き寄せたのは僕自身・・言い訳をしたいけど それが許されないことがある。
真相を知っているその人が もうこの地上にいないこともある。だから誤解が生じるのだけど、相手にはそのようにしか見えないだろうことも分かっている。この世界に生きることは苦しみを背負うこと・・悲しみを味わうこと・・ でもこの地上に生きている間しか 皆と出会えない。この人間としての哀しみを 味わい尽せない。苦しい時は今のことしか考えない。明日があるかどうか神様にしか分らない。
「今すぐにも人生を去ってゆく者の如く、あらゆることを行い話し、考えなさい」
これは嘗てローマの時代を生きた一人の魂の言葉だけど 苦しい時 追い詰められた時にしか 深い真実は見えないのかも知れない。