
薬
薬の御蔭で これまで精神科医をやってこられたのだと思う 薬を呑むのが厭で 薬から自由な日を夢見て何度止めようとして苦しんだことか でも僕の場合はどうしても薬の力を借りないと毎日の生活が出来なかった 何度も薬を止めることに挑戦しては 敗退することを繰り返してきた
そして いつの間にか 「もういいや 薬がないとやっていけないなら 一生薬を呑み続けよう 逆に 薬の御蔭で診療ができると思えば 感謝に変わっていく 薬の御蔭で僕の足りないエネルギーを補完することができる それは 悲しむべきことではない 」
それは 嘗ての時代であったら 不可能であった病人である僕が 精神科医として薬と二人三脚で日々の診療を行うことを可能にした感謝すべきことであり 嘆くことではない 僕には薬の持つ力が必要だし 薬を開発し製造し販売してくださる人々の助力によって このようにクリニックで何とか患者さんと対峙し問題を一緒に考えることができる
薬を敵視する一部の人たちに言いたい 薬の副作用で苦しんでいる人がいる でもその同じ薬の御蔭で これまでよりもより充実した日々を送っている僕のような人間もいることを分かっておいて欲しい