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    自閉症の次男

        約10年前に 次男について書いたものです



     次男が我が家に来てから早いもので もう9年にもなろうとしている 能力という点から見ると彼は零点に近い存在である 能力の高低がその人間の掛け替えのなさであるならば 彼の存在価値は極めて低い しかし今や我が家にとって彼のいない生活など考えることもできない ここがとても不思議なところである

     彼は別にハンサムな訳ではない 拘りが強くて 家族にとっても難物である 外食する時等 最近は特に大変である 奇声を発するし ひどいパニックを起こすし・・・・ そんな時周りの人々の想いや 視線を受けて6年生の長男はいつも辛い想いをしている 恥ずかしくて堪らないのだろう その気持ちはよく分かる 長男が可哀そうになることもしばしばである 恥ずかしさのあまり次男を叩いたりつねったりする 当然のことながら 彼ははいよいよ大声で泣く

     情けない気持ちになるが 障害児を持った家族は 多かれ少なかれそんな気持ちを味わっているのだろうと思う でも彼の寝顔を見ているとそんなことも忘れて 「なんて可愛いんだろう なんて純粋なんだろう」と感動してしまう 父親の私の中にある汚いものとは隔絶した清らかさがそこにあるのを感じてしまう

     この子達は何を伝える為にこの地上に来たのだろうか?この人間不信 世界不信 エゴイズム ニヒリズム 拝金主義が渦巻く世界になんと無力な姿でやってきたことか 無力なままに私たちに全てを托身して彼等はやってきた その事実に先ずは深く感動してしまう

     彼等を騙そうとすれば 簡単なこと でも彼等は幾ら騙されようと 苛められようと 人間を 世界を信じることしか知らない 親として彼等が安心して生きられる世界を創りたい 弱い人も能力のない人もその存在の掛け替えのなさが極みまで大切にされるそんな世界を創りたい

     人間不信の強い私の中からこんな想いを引きだしてくれたのは 他でもない「障害児」として生きている次男である 次男は神が私たち家族にお与えになった「問いかけ」であり或る意味で深い「希望」そのものであるのかも知れない 人間の尊厳とは何か常に考えさせられる毎日である 
    プロフィール
    福岡市中央区天神 心療内科 精神科
    心のクリニック新しい風
    http://atarashiikaze.com

    精神科医ギル

    Author:精神科医ギル
    こんにちわ 私は 一人の精神科医です 同時に一人の患者です
    心に浮かぶままに ブログを書いていきます よろしくお願いします

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