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    父の志を継ぐこと



     先日、父がこの地上を去った。優しい人だった。私は経済学部の学生の時、鬱状態になり、激しい不安発作に数年間苦しんだ。いつか書いたように、精神科医への道へ進むことを決意した。そのことを父に告げた時、市会議員として働くことを、周囲から、期待されていた父であったにも拘わらず「お前がそうしたいのなら、自分の願いに生きてみればいい・・」と言ってくれ、市会議員の道を捨ててしまった。しかも退職していたので、田舎であったこともあり、学費を捻出するために、椎茸の栽培を始めてくれた。

     今思うと父は大変だったと思う。そんな父の真心に どれ程感謝の想いがあっただろうか。恩恵の自覚の欠如に 亡き父に申し訳ない気持ちで一杯になる。こんな感謝の薄いドラ息子の為に、一言の愚痴も言わず、黙々と働き仕送りをしてくれた。その父の真心にどれだけ応えて生きてきただろう?精神科医として毎日患者さんと出会い、その方の人生に触れてゆく日々・・でもこれまでどれだけの強い想いと願いを持って 患者さんに出会ってきたのか・・・少なくとも、父の葬儀で喪主を務めながら 父が私に無償で与え続けてくれたまごころに応えきれていない現状を思った。

     精神科医として一人の人間として 苦しむ人々の同伴者として生きること、それが、少しでも父が与えてくれた まごころに応える道だと思う。私もただの人間であり、発展途上の未熟な人間です。でもこの地上に生まれて、この地上を去るその時まで、命を燃やして生きようと思う。それが、この僕を愛してくれた父を始め 多くの人々のまごころに応えることだと思うから。未熟は承知の上で、これからの人生は、これまで多くの人たちに与えて頂いた愛に応える、御返しの人生なのだと思う。診療していても自分の力の無さに 情けない想いになることがある。目の前で苦しんでいるその人を助けてあげたいのに その力が無い時の悔しさ、申し訳なさ・・そんな時、人間的な更なる努力はするが、自分の未熟さを認めた上で 大いなる存在に心から祈る気持ちになっている。僕一人の力では、その苦しみや痛みに十分に応えきれないから・・自分を遥かに超えた 大いなる力に托身するしかないことも多い。

     今回、父を送るにあたって 精神科医として志を新たにして一日一日の患者さんとの出会いに 更なるまごころを尽くすことを父の魂に誓う。お父さん今生、父と子としての縁の中での出会いをありがとうございました。必ずお父さんさんのまごころに応えて 苦しんでいる人々の傍らで、たとえ微力であっても全力を尽くします。

     僕がこの地上を去る時は、迎えに来て下さい。お父さん、掛け替えのない出会いを ありがとうございました。
    プロフィール
    福岡市中央区天神 心療内科 精神科
    心のクリニック新しい風
    http://atarashiikaze.com

    精神科医ギル

    Author:精神科医ギル
    こんにちわ 私は 一人の精神科医です 同時に一人の患者です
    心に浮かぶままに ブログを書いていきます よろしくお願いします

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