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    魔法使い

       

     私は、22歳の時に急性の腎炎を患い、2か月程入院し、約1年間、減塩食を食べました。血尿がずっと続きました。病棟の師長さんは、「この人は危ないんじゃないか・・」と秘かに思っていたようです。その頃からひどい頭痛に襲われるようになり、鎮痛剤を呑んでも効きませんでした。それからはとても疲れやすくなり、精神科医になった頃には限界でした。

     その頃から私は、或る種の安定剤を服用するようになりました。頭痛には安定剤が効果を発揮する場合が かなりの頻度であります。私の場合は頭痛だけではなく、疲れやすさや幾分抑うつがあったように思います。それで薬を呑むことでかなり、楽になりました。それ以降、薬を呑み続けて今日まできました。時々、鬱の薬を呑みながら、鬱の人の治療をしている自分が おかしく思えることがある。自分の方が疲れて 気持ちが落ち込んでいるような時、変な気持ちにもなる。「何やっているんだろう?」とか「おもしろいなあ」とかいろいろ思う。でも精神科医になりたかった訳だし、なんの不満もない。

     患者さんの中には、特に最近ネットの影響なのか 薬=悪いもの という固定観念が蔓延しているように感じる。確かに薬には効果と副作用がある。しかし、ネットで流されている程ひどい副作用があることは滅多にない。或る意味情報過多の社会の中で 情報操作されているのではないかとすら思える。何が正しくて何が偽りなのか しっかりと自分の目で確かめなければいけない時代だと思う。その意味で 真の弁別力が求められている。真偽を見分ける力が必須である。今の時代 本物に似た偽物が多い。宗教指導者においてもそうである。自分を信仰の対象にさせることじたい、自己顕示欲という煩悩以外の何物でもない。そんな自己顕示欲に囚われた人物が 新しい時代を切り開く力を持っているとは思えない。本物と偽物を弁別する力を よび覚まさなければならない。

     薬に使われるのではない、薬という一つのエネルギーの集中固体化したものを 自分が主人となって自由に使いこなすことだと思う。薬は上手にそのエネルギーを使いこなされることを待っている。薬を開発してくれた人に対する 感謝の気持ちでエネルギーの集中固体化したものである薬を使いこなせれば 薬は非常に有効である。勿論薬が根本的に癒しをもたらすわけではないが、薬は召使であり。魔法使いの腕次第でその力を有効に発揮できる。薬をサポーティブに使いながら、本当の問題である、本人の心の問題を共に見つめていく。鬱の真っただ中にある人に 希望を語っても入っていかない。抗鬱剤で少し明るい世界を先に見せてあげれば 鬱は治っていくんだという希望を持つことができるし、こちらの語る言葉も入りやすくなる。そうなれば、精神療法も有効に使える。
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    プロフィール
    福岡市中央区天神 心療内科 精神科
    心のクリニック新しい風
    http://atarashiikaze.com

    精神科医ギル

    Author:精神科医ギル
    こんにちわ 私は 一人の精神科医です 同時に一人の患者です
    心に浮かぶままに ブログを書いていきます よろしくお願いします

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