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    降りてくるものを待つ

     診察室の中で、患者さんと対峙している私・・何となく言うべきことが掴めず 焦りにもにた感情に圧倒されそうになる時、そんな時は、間に降りてくるものを待つことにしている。心の耳を澄ませて この患者さんに起こっていることの意味や、この患者さんの無意識が この出会いを通して求めているものが何であるのか、全身で聞こうとする。それは、或る意味では神殿の巫女が 自らの心を調和させつつ神託を聞こうと集中しているような感じかな・・この魂がこの出来事を通して 何を知りたいと思っているのか?何故なら症状は表面的なものでしかないし、この苦しみを通してこの患者の魂が、この患者の表面意識に メッセージしたいと願っていることがあると感じているから・・治療者としての私は、この方の前に座してこの方の内なる魂が この場にメッセージしようとしていることが何であるのかに意識を集中する。

     つまり私が治すのではないし、初めから私には治すという気持ちがない。治すのではなく、その方がこの病や試練を通して 気付かなければいけないことがあり、その声なき声を 彼と対峙しつつ共に聞こうとしているだけである。そのメッセージに彼が気づくことが出来れば 私が何もしなくても彼の内面から あるべきように事態が展開してゆく。だから精神科医は治す人ではない。その人の前に立って その人に訪れている事態が呼びかけている サイレントコーリングに共に心の耳を傾けるだけであり、彼の同伴者としてその呼びかけの意味を 共に考えていく存在である。病は呼びかけであり、彼のこれまでの生き方に対して 変革を促す場合も多い。そのサイレントコーリングに どこまで深くアクセスできるのかが 決定的に重要だと感じている。

     この世界で起きることは、表面意識からはただの偶然にしか見えなくても、全ては深い次元で必然であると思う。だから自分に起きる出来事は 全てが必然であり、何か大切な呼びかけを伴っている。精神科医の私がこんなことを言うと分かりにくいかもしれないが、毎日の出会いの中で そのことが真実であり、患者さんは後になって その病や試練が自分に呼びかけていたものが何であったのかに気づくことが多い。

     私がどうかするのではないことは確かである。患者さんと私の間に 静かに降りてくるものを待つことの深い意味を 最近の出会いを通して痛感させられている。
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    プロフィール
    福岡市中央区天神 心療内科 精神科
    心のクリニック新しい風
    http://atarashiikaze.com

    精神科医ギル

    Author:精神科医ギル
    こんにちわ 私は 一人の精神科医です 同時に一人の患者です
    心に浮かぶままに ブログを書いていきます よろしくお願いします

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